【追悼 Dave Greenfield】

Dave Greenfieldに... 心からの敬意と感謝を込めて

...まさか、このようなかたちで彼にさよならを言うことになるとは。2020年に世界を揺るがした忌まわしきパンデミックは、自分が40年以上に渡って敬愛してきたバンド、The Stranglersに魔法のタッチを添えてきた名キーボード奏者、Dave Greenfieldをこの世から奪い去ってしまった。その衝撃的なニュースが飛び込んでくるまで、「...ご老体のJetさん、喘息持ちだったけど、大丈夫かなぁ...」などと心配していたのだが、まさかあのDaveが、こんなにあっけなく逝ってしまうとは。昨年11月、久々の来日公演でも元気そうだったのに。

Dave Greenfieldは、おそらくThe Stranglersの黄金時代(1977年~1990年)を築き上げた<オリジナル>メンバー×4人の中で、最もミステリアスな存在だったかもしれない。Hugh CornwellJean-Jacques Burnel(”JJB”)は、言うまでもなく<二枚看板>として強烈なカリスマ性を備えていたし、Jet Blackはそれこそ<黒幕>じゃないが、後ろから睨みを利かせている(おっかない)<首領>だった。このようにキャラクターが判り易かった(?)3人と比べると、Hans Wärmling脱退後のバンドに最後に加入したDaveは、あくまでもその演奏(力)のみで自らの存在を主張していた。HughやJJBのようにステージから観客を挑発するようなこともせず、二人が楽器を放り出して客席に飛び降りたりしても、黙々と演奏を続けているようなところがあった。その一方で、音楽面で中核となっていたのは、一貫して彼の素晴らしいキーボード・ワークだった。デビューシングルとなった“(Get A) Grip (On Yourself)” に始まり、“No More Heroes”、“Tank”、“Duchess”、“Waltzinblack”、“Golden Brown”、“Strange Little Girl”、“The European Female”、“Skin Deep”、“Always The Sun” 等々、どれもDaveが奏でる魅惑的なパートがあってこそ、まぎれもないThe Stranglersの代表曲として世代を超えたファンの記憶に刻まれることとなったのである。無駄口を叩きもせず、「音楽にすべてを語らせる」ことだけを見事に実践し続けたDave -- その偉大なる功績を称えつつ、あまりにも唐突な悲しい別れとなってしまったことに、心からの敬意と感謝を込めて、ここに哀悼の意を表したい。


~個人的なお気に入り -- DaveのThe Stranglersにおける名場面の数々(1977年~1990年)~


Goodbye Toulouse” [アルバム RATTUS NORVEGICUS 収録 -- 1977年リリース]
今年2月、Hughの来日公演を見た。彼がこれまでに発表してきたソロ作品の中でも最も充実した一枚となった『MONSTER』の収録曲を中心に、The Stranglers時代のレパートリーも沢山歌ってくれた。これもそのひとつ。しかし、Daveのパートが欠けてしまった演奏に、どうしようもない物足りなさを感じたのは否定できなかった。だから、ステージ上で歌うHughを見つめながら、頭の中では、Daveの音をずっと鳴らし続けたのだった。そういうファンも少なくなかったに違いない。

Peasant In The Big Shitty” [アルバム NO MORE HEROES 収録 -- 1977年リリース]
The Stranglersに加入する前のバンドでは、リード・ヴォーカルを担当していたこともあったというDave。“Hanging Around”や“Walk On By”のコーラスで聴けるJJBとDaveのハーモニーも、彼らの魅力だった。ここでは、変拍子を巧みに取り入れた演奏と、サイケデリックな歌詞、そしてDaveによるおどろおどろしい(?)ヴォーカルの相乗効果がなんとも不気味。彼らが単なるパンク・バンドではなかったことを実証していた一曲。

Enough Time” [アルバム BLACK AND WHITE 収録 -- 1978年リリース]
1978年の夏、この曲と“Threatened”をラジオで聴いたのが、彼らの音楽との衝撃的な出会いだった。Kraftwerkの影響をモロに感じさせる一曲。(Daveが亡くなった数日後に、Florian Schneiderの訃報が伝えられたのも不思議な巡り合わせだった。)間奏の耳をつんざくようなモールス信号は、「SOS. This is planet Earth. We are fucked. Please advise.」とのこと。まるで2020年の地球そのままだ。

Dead Ringer” [アルバム LIVE (X CERT) 収録 -- 1979年リリース]
自分が最初に購入した彼らのレコードがこれ。初来日記念盤で、シングルと巨大なポスターがオマケに付いていた。とにかく興奮して聴きまくった一枚。ブートレッグまがいの音質はともかく、ここで聴けるライヴ・ヴァージョンのどれもが、スタジオ録音よりもはるかにエキサイティングだ。この曲のリード・ヴォーカルがDaveだと知ったのは、かなり時間が経過してからだったけど。

Don’t Bring Harry” [アルバム THE RAVEN 収録 -- 1979年リリース]
今も大多数のファンが最高傑作に挙げる『THE RAVEN』では、それまで以上にDaveのシンセサイザーをフィーチャーした音作りが、1980年代の到来を予感させたが、今になって聴き返してみると、この曲でDaveが弾く陰影に富んだピアノの音色の方が、かえって印象深かったりもする。個人的には“Golden Brown” と双璧をなす(ヘロインに触発された)名曲。

Four Horsemen” [アルバム THE GOSPEL ACCORDING TO THE MENINBLACK 収録 -- 1981年リリース]
HughとJJBがともにお気に入りのアルバムとしている『THE MENINBLACK』は、かなり実験的な野心作だが、レコーディング中は次から次へとトラブルに見舞われ、バンドにとってまさしく<呪われた日々>だった。Daveはオカルトにも強い関心を抱いていたらしいが、ツアー中の移動時間は他のメンバーのように読書に励むのではなく、ひたすらクロスワードパズルに没頭していたという。リズムで遊ぶ部分など洗練されたアレンジが光るこの曲は、まさしくDaveの檜舞台。ヴォーカルのねじ曲がったメロディーラインについては、パズルを解いてもらうようにDaveに一任した、とHughが明かしており、なかなか興味深い。

How To Find True Love And Happiness In The Present Day” [アルバム LA FOLIE 収録 -- 1981年リリース]
今さら“Golden Brown”については何も言わないでおく。その美しいハープシコードの余韻を残したまま登場してくるこの曲のどことなくユーモラスなキーボードの演奏が、Hughの(「her penis」を暗示した)「happiness」のフレージングとマッチしていて可笑しい(politically incorrectかもしれないが)。

All Roads Lead To Rome” [アルバム FELINE 収録 -- 1983年リリース]
英国では不評だったが、フランスでは大いに売れたという『FELINE』は、自分も大いに気に入っている一枚。日本でなぜこれが売れなかったのか、理解に苦しむ。初めて“Midnight Summer Dream”を聴いた時の感動は忘れられない。そして、The Stranglers版テクノポップの完成形となったのが、この曲。

SpainLaughingSouls” [アルバム AURAL SCULPTURE 収録 -- 1984年リリース]
Daveのシンセサイザーが大活躍したアルバム、いかにも80年代っぽい音作りではあるけど、この3曲のスムーズな流れは『ABBEY ROAD』のB面を連想させたりもする。Marvin Gayeに捧げたという“Laughing”は、彼らが残した最も美しい楽曲のひとつ。アルバムのプロデュースをMarvinに依頼する、という(とんでもない)話が実現していたら、どうなっていただろう。

Too Precious” [アルバム DREAMTIME 収録 -- 1986年リリース]
ファースト・アルバムのフィナーレを飾る“Down In The Sewer”と、その9年後にリリースされたこの曲を聴き比べてみると、彼らがどれだけ音楽的に進化してきたかが分かるだろう。初期の攻撃的なサウンドを好んだファンの多くは離れていったが、Hughのギター、Daveのキーボード、JJBのベース、そしてJetのパーカッションがひとつに混ざり合い、ラテン・フレーバーさえ感じさせる演奏には、彼らが磨き上げてきた音楽の到達点を見る思いがした。

Motorbike” [シングルB面 -- 1990年リリース]
Hughが参加した最後のアルバム、『10』については...言わぬが花といったところか。唯一の救いは、DaveによるR&B風のキーボード・ワークが効果的にフィーチャーされていたことだった。この曲は、(HughとJetに却下されて)アルバムに収録されなかったが、Daveの弾くハモンドの音色が実に爽快だ。バイク乗りではない自分でも、JJBの心情が分かるような気になったりする。


...どうもありがとう、Dave。貴方が残した素晴らしい音楽は、これからもずっとダイヤモンドのように輝き続けるだろう。

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